2026年1月、OECDのDigital Education Outlookは「偽りの習熟」に警鐘を鳴らしました。AIの支援によって成績は上がる一方で、自力での能力が静かに低下していく生徒たちのことです(OECD, 2026)。これは研究データに基づく警告でした。その3か月後、欧州最大の教員組合が、それが実際に起きているかどうかを最もよく知る人々に問いかけました。National Education Union(NEU、英国最大の教員組合)は、年次報告書 State of Education のためにイングランドの公立学校の教員9,408人を調査し、4月の大会で発表しました。教室からの答えは研究結果と一致していました。中等学校教員の3分の2が、AIのせいで生徒の批判的思考が低下したと回答したのです(NEU, 2026)。
同じ調査では、これらの教員の76%が自身の業務でAIを使っており、前年の53%から大きく増えていることも分かりました。教員はテクノロジーを拒んでいるわけではありません。日常的に使いこなしながら、別の種類の使われ方が生徒に何をもたらしているかを目の当たりにしているのです。普及と警戒が同時に高まっているというこの組み合わせは、今年発表されたどの資料よりも正直な教育×AIの姿であり、学校が次に何をすべきかを直接指し示しています。
9,408人の教員は実際に何を語ったのか
主要な数字は、切り離してではなくまとめて読む必要があります。教員の4分の3(76%)が日々の業務でAIツールを使い、その用途は教材作成(61%)、授業計画(41%)、事務作業(38%)が中心です。同時に、中等学校教員の66%が、AI利用の結果として生徒の批判的思考が低下したと考えており、そのうち3分の1は強くそう感じています。生徒が自由にAIを使える機会が少ない初等学校では、低下を実感する教員は28%にとどまります。そしてその根底にあるのが、49%の学校には教職員向けにも生徒向けにもAIに関する方針がまったく存在しないという事実です(NEU, 2026)。
中等学校と初等学校の差こそが、懸念を証拠へと変える細部です。テクノロジーに対する教員の悲観論が単なる気分であれば、生徒の接触度とこれほどきれいに連動するはずがありません。しかし実際には連動しています。生徒がチャットボットに課題を作らせられる環境では教員は思考の低下を見ており、ほぼできない環境ではほとんど見ていないのです。因果関係の証明ではありませんが、これはまさに研究が予測した通りのパターンであり、報告しているのは英国の教員だけではありません。2026年6月のIpsosの調査では、米国の教員もAIと生徒の批判的思考について同じ懸念を示しています(Ipsos, 2026)。
なぜ教員は自分にはAIを歓迎し、生徒には警戒するのか
一見すると、この調査結果は矛盾しているように見えます。1年でAI利用を倍増させた職業集団が、AIに警鐘を鳴らしているのですから。しかし矛盾はまったくなく、その理由を理解することが議論全体の鍵になります。教員がAIでワークシートの下書きを作るとき、AIが生み出すのは教員自身がすでに作れる成果物であり、人間にしかできない仕事のために時間が空きます。一方、生徒がAIに小論文を書かせたり物理の問題を解かせたりするとき、AIが肩代わりするのは、その課題が鍛えるために存在していたプロセスそのものです。宿題の目的は成果物ではありませんでした。目的は思考であり、チャットボットが引き受けてしまうのはまさにその部分なのです。
これはOECDが記録したメカニズムそのものです。Outlookが取り上げた1年間の研究では、AIチャットボットを使った生徒はAIが使える間は劇的に良い成績を収めましたが、そのツールを取り上げると、一度もAIを使わなかった生徒より17%低い点数になりました(Bastani et al., 2025)。私たちはOutlookの公開時にこの研究を詳しく検討しました。2026年に新しいのは、この効果がもはや研究上の発見にとどまらないという点です。中等学校教員の3分の2が、教壇から見えていると語る現象になったのです。
方針の空白が事態を悪化させる
イングランドの学校の半数にはAIに関する方針が一切ありません。実際には、AIに生徒の思考を肩代わりさせるかどうかの判断が、教育の中で最も目の届かない場面で、子ども一人ひとりに委ねられているということです。その一方で政府は、教育機会に恵まれない生徒向けのAIチューターの導入計画を進めており、現場は納得していません。この計画を支持する教員はわずか14%で、49%が反対しています。NEUのダニエル・ケベデ書記長は、組合の立場を慎重にこう表現しました。「AIチューターが恵まれない生徒の機会格差を埋める特効薬だとは、私たちの職業集団はとうてい確信できていません」。そのうえで、AIが学びを向上させるのは「高度な専門性を備えた職業像の中で、正しく実装された場合に限られる」と付け加えています(NEU, 2026)。
私たち自身がAIチューターを開発していますが、この懐疑は健全だと考えています。教員は、ソフトウェアが子どもの学びを助けること自体に反対しているのではありません。自分の教室で得た証拠を背に、生徒に答えを出す機械を渡してそれを個別指導と呼ぶことに反対しているのです。14%という数字は教育におけるAIの拒絶ではありません。こうしたツールを作る側が批判的思考の問題に真剣に向き合うべきだという要求であり、その要求に応えてきたツールはほとんどありません。
問題はAIか否かではなく、誰が考えるかである
NEUの調査とOECDの報告書を並べると、両者はAI市場の真ん中に同じ線を引いています。一方にあるのは、学習者の代わりに成果物を作るAIです。小論文も、解答も、説明も求めれば出てきます。それは成績を水増しし、力を空洞化させ、教員が批判的思考を蝕んでいると見ているものそのものです。もう一方にあるのは、学習者自身の取り組みを足場として支えるAIです。観察し、難易度を調整し、次の試行を促し、認知的な負荷を本来あるべき場所に残します。OECDのデータは前者が学びを損なうと述べ、教員の実感もそれと一致しています。今年初めてAI方針を策定する学校は、そして49%がそうする必要がありますが、禁止サイトの一覧ではなくこの区別から出発すべきです。
生徒自身に手を動かさせるAI
この区別こそが、WhimsyLabsの設計思想の出発点です。私たちの仮想実験室は、生徒に科学を説明しません。生徒が科学を行います。実験を計画し、器具を扱い、完全な物理シミュレーションの中でその挙動を観察し、現実の結果を伴う失敗をし、もう一度挑戦します。実験室に組み込まれたAIチューターのWhimsyCatには、生徒が答えを尋ねられるチャット画面がありません。誰かの結論を書くことも、誰かの滴定を解くこともできません。そもそも尋ねるための経路が存在しないからです。代わりにWhimsyCatは、一人ひとりの取り組み方を観察し、その行動からどこでつまずいているかを推測し、生産的な努力へと引き戻し、見えたことを教員に報告します。教室の専門家は、あくまで教員です。
その結果生まれるのは、NEUの組合員が引いた線の正しい側で動くAIです。批判的思考を育てる格闘は外部委託されずに守られ、生徒がWhimsyCatに思考を丸投げしようとしてもできません。さらに、私たちの評価は最終的な答えではなくプロセスを採点するため、生徒の推論は、本人のものかどうか分からない体裁の整った成果物の陰に隠れるのではなく、教員に見える形になります。教員がNEUに伝えたのは、専門職を置き換えるのではなく、高度な専門性を支えるAIが欲しいということでした。それは一つの仕様書であり、私たちが作り上げてきたものはまさにその仕様に沿っています。
方針のない49%は何をすべきか
この夏、白紙からAI方針を作り始める学校管理職に向けて、調査と研究は短い原則を示しています。
- 教職員の利用と生徒の利用を分けること。教員の書式整えを1時間節約するAIと、生徒の課題を書いてしまうAIは、重要なあらゆる点で別物です。
- 生徒が使うツールでは、思考がどこで起きるかを問うこと。AIが成果物を作れてしまうなら、利用規則に何と書いてあろうと、生徒はそれに任せると想定すべきです。
- 成果物だけを返すツールよりも、生徒のプロセスを教員に見えるようにするツールを選ぶこと。そうすれば、取り組みの低下を試験期ではなく早い段階で捉えられます。
- 設計の段階から教員を関与させ続けること。NEUの組合員の意思は明確です。専門的判断に取って代わるのではなく、専門的判断に対して説明責任を負うAIを求めています。
- 毎年見直すこと。教員のAI利用は1年で53%から76%へ跳ね上がりました。昨年の技術を前提に書かれた方針は、すでに時代遅れです。
測定器の声に耳を傾ける
NEUの調査には9,408件のデータがありますが、重要な発見は単純です。子どもが考える様子を日々、大規模に観察できる最良の立場にいる人々が、何かが変わりつつあると報告しており、その方向は統制された研究が予測したものと一致している、ということです。教員は未来に抵抗しているのではありません。彼らこそが測定器であり、その目盛りははっきりと読み取れます。答えは、科学教育におけるテクノロジーを減らすことではありません。学びが起きる場所、すなわち生徒自身の手に努力を戻すテクノロジー、観察し、足場をかけ、決して代わりに考えないAIこそが答えなのです。
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参考文献
- National Education Union. (2026). State of education: AI. https://neu.org.uk/latest/press-releases/state-education-2026-ai
- OECD. (2026). OECD Digital Education Outlook 2026. OECD Publishing. https://www.oecd.org/en/publications/oecd-digital-education-outlook-2026_062a7394-en.html
- Bastani, H., Bastani, O., Sungu, A., Ge, H., Kabakcı, Ö., & Mariman, R. (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences. https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2422633122
- Ipsos. (2026). Teachers concerned about the impact of AI on students' critical thinking. https://www.ipsos.com/en-us/teachers-concerned-about-impact-ai-students-critical-thinking
- Schools Week. (2026). DfE invites bids from AI tutoring pilot partners. https://schoolsweek.co.uk/dfe-invites-bids-from-ai-tutoring-pilot-partners/
